登山の「ガセ」情報?その6

Yahooの「知恵袋」という質問して回答をすると、良い回答には「知恵コイン」がもらえるというコーナーがありますが、その中にたまたま大きな誤りを見つけてしまった。
「残置しない懸垂支点の作り方」というYouTubeを見て、その結び方を知りたいと言う質問に対しての回答が明らかに間違っている。
間違っているが、質問者は「ベストアンサー」マークを付けて’解決済み’にしているためその間違いを指摘してやることが出来ない。
ページはここだ。
この結びは、シェーズガンスとしてAGSJのマニュアルに(ガイドマニュアル2章、共通技術)公開しているところから、知っている方も大分いるはずである。
出展元のマニュアルを書いた私としては、こういうことを恐れていたのだった。
見よう見まねでかっこいいからやる、と言うのでは事故が起こってしまう。知恵袋のベストアンサーにある写真の結びでは、荷重が掛かっても結びが締まる事はないし、解けてくる可能性がある。
質問者の見たと言うYouTubeも確認したが、YouTubeで行っている結びの動画は間違っていない。しかし、その結びが必要となる設定が間違いだと言わざるを得ない。
「残置スリングをするのがもったいないから・・」と言う説明で実演していたが、余っているなら残置することが安全である。残置出来ない状況に陥りそうな場で必要な技術だと言うことを理解いただきたい。
実際にあった事、黒部の奥鐘山西壁を登って、下降ルートが判らずに、南西壁を降りてきてしまった。つまり、西壁よりも上流側に降りてきたことになる。途中から懸垂下降になって、壁が大きいから何ピッチも懸垂下降を余儀なくされたらしい。最後には、ヤッケの紐、靴紐まで外して支点に残置して懸垂支点を作ったと言う話を当人から聞いたことがある。こんな場では、この技術があればなんなく降りられたことだろう。
また、大きな角のある岩角を支点にするようなときは、直接ロープを回してもロープが回収できない。そんなときにもこの回収技術は有効に働く。また、長い氷壁のような箇所を何ピッチも懸垂する際も有効である。日本のような5ピッチも懸垂すれば下についてしまうところで行う必要は全くない。ヨーロッパの長い氷壁ルートやヒマラヤの長い氷壁ルートを下降しなければならなくなったときに知っておくと有効となろう。
そんなわけで、「知恵袋」にあるベストアンサーは間違っているので真似をしないようにしてほしい。また左図のV字スレッドにシェーズガンスを使うことも今では古い技術の範疇となる。今は、V字スレッドの穴に直接ロープを通して回収することが容易で、安全であると変わってきている。
図解入りで解説してあるAGSJのマニュアル(2章共通技術)3,500円を買ってお読み頂きたい。

登山の「ガセ」情報?その5

技術情報については、その技術が使われる状況設定によって変わってくるために一概に言えないし、実はなんでもありだと思っている。
つまり、究極的にはこの技術が常識だというものは無いと思っている。目的のために選択する手段のひとつだと捉えると解り易い。
とはいっても、技術個々の中には、「ガセ」っぽいものも多い。
現在、日本アルパインガイド協会というところにいて、最新のENSAの技術に触れられるところにいるが、一般的には技術書や情報雑誌から
得た知識と実際の体験で、判断せざるを得ないため不確定なものとなり易い。よって単純な技術でも議論百中の的となりやすい。
最も多いのは、「この技術は危険だ、やってはいけない」というもの。事故がそれによって起こったからと勝手に想定したり、一回の事故で「この技術は危険だ」と結論づけているもの。
まあ、「危険だとして使わないようにすれば安全側に作用して事故は起こらないだろう。」と思えるものが多い。これが「ガセ」にも関わらず雑誌にでも「危険な技術」などと紹介されると日本国中瞬く間に定着してしまう。
これが安全な技術だ、として紹介される新しい技術はめったにない。
そんなことで「ガセ」的な技術情報が次々と出てくるが、その多くは何かを禁止したり、危険だとした技術に多い。
昨年秋に次のような問いを頂いた。
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> 先日、ミズガキ山を登りましたが、その時の写真を友人がHPに載せたところ、ある
> ガイドから、「ダブルロープで1本目のヌンチャクにロープを2本かけるのは危険
> だ」という指摘があったとのことでした。
> それについて、友人と添付メールのようなやりとりをしています。これについて勝野
> さんのご意見をお聞かせください。また、勝野さんが最初のカラビナにロープを2本
> かけている理由を教えていただきたいと思います。
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たまたまだろうが、私が最初の支点にロープを2本通したのを見られていた。ただし、これは必ずやるのではなくて、その支点から斜めに動くときなどは
必ずやる。真上に登るときは一本づつ掛ける、その方がロープが伸ばし易いからだけど。
このメールへの私の答えは次だった。
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最初の支点にロープを何で2本掛けさせるかは、確保者のロープのたるみをなくし、2本とも同じ方向に引かれるように
することが目的です。
非常に単純でシンプルです。
ガイドと一般の方の違いは、登るガイドより、確保してくれるクライアントに配慮しなくてはならないと言う点ですね。
もしも、ロープどおしが擦れあって溶ける危険性があると思ったら、カラビナを2枚使って一本づつ通します。
しかし、一般的にはクロスしたランナーを配置しない限りは、方向が2本とも一緒の場合は、弛んだロープがカラビナの中で逃げますから摩擦による溶融は
起こらないはずです。
2本のロープが拘束された状態でクロスしていて、別々に動くと、ロープは溶けます。
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質問者は、くだんのガイドの指摘、パートナーの「基本に忠実に」という指摘、別の外国人パートナーの「なんてあぶない登り方してるんだ」との指摘と三ヶ所から上がった火の粉にやむを得ず私に聞いてきたものと思う。
怪しいのは、「基本に忠実に」の基本にありそうである。「俺はそんな基本は知らんぞ」と言っておく。
どうも、UIAA規定のロープの使用と耐力にある絵を見てダブルロープは1本づつ掛ける、ツインロープは2本まとめて掛ける、を基本として捉えて言っている様である。
もしも、このことを指して基本だと言っているなら、ツインロープについてはまさに基本なんだが、ダブルロープについては基本だとは言えないんだ。
あれは、こうやって使えうことを想定して耐力、衝撃、伸びを規定していますよ、と言っているのであって、こうして使わなくてはいけません、と言っているのではない。
シングルでカラビナに掛けても規定の耐力、弾力性を発揮しなくてはなりません。別々のカラビナに掛けて墜落しても残存衝撃が規定値以下です。
と言っているのです。それがUIAAの規定なんですから。最初の支点の耐力が充分であるなら2本掛けても問題はない。
このUIAAの図を勝手に解釈する人がいるということが「ガセ」情報の元であるようである。
2本一緒に通したら溶けるという危険性を指摘するのはこじつけ、溶ける危険性は殆んど無い。テンションが掛かった2本のロープが交差していない限り溶けることはない。
危険性を指摘されて、その指摘が間違っていると解っていても、なかなか広まった「ガセ」情報は覆ることがないので困る。
いわば、冤罪事件(えんざい)の判決みたいなもんじゃないかな。
この内容に異論があったらメールを下さい。
「ガセ」情報?その6~10は2月に書きます。ひとまずお休み。

登山の「ガセ」情報?その4

登山の場合、警察や山小屋でだす情報はその信憑性が疑われることは殆んど無いのだが、次の例はある目的のために作為的に発した「ガセ」情報なので紹介しよう。
裏剣で有名な某小屋に張り出された張り紙情報は、多くの登山者を惑わせた。
2006年時からのようである。
「連休中 ケヤキ平〜宇奈月 午後の切符 入手困難です。」というものである。
「欅平からのトロッコ電車は、午前中に到着しないと乗れません。」
「10月4日午後および5日午後のトロッコは乗れません。」とその都度書き替えていたようである。
概ね次のようなことを言いたいのであろう。
「欅平に午前中に着かないと、宇奈月行きの峡谷鉄道には乗れませんよ。そのために某小屋を出たらA温泉小屋に一泊して下さい。そうすると翌朝、欅平に午前中に着いて宇奈月行きの電車に乗れます。途中にあるS温泉小屋でなんか泊まったら、欅平には午後にしか着かないので、その日のうちに宇奈月に着きませんよ。」ということを言いたいわけである。
赤い字の部分を書いてないために、その仔細を知らない登山者は、また元来た道を引き返して剣沢を登り返したりしたのである。
この張り紙の内容は全くの嘘偽りであり、午後に欅平に着いたからと言って峡谷鉄道に乗車出来るし、S温泉小屋に宿泊したお客様が欅平で足止めされたという事実も無い。
2010年に黒部峡谷鉄道からキツイお叱りを受けたと聞いている。
下界ではありそうな話だが、客の奪い合いを山の上でもやったのである。下のような看板をS温泉小屋でも出したようだ。
裏剣の写真撮影ポイントとして有名な某小屋のあまりのモラルの欠如に、私はあっけにとられた。
情報操作までして意地悪をする、なにか根深いものを感じずにはいられない。
最後に付け加えるなら昨年はそういったことは無かったようである。

 

仙人温泉小屋看板

トロッコは全員乗れますよ!

 

登山の「ガセ」情報?その3

「ガセ」情報は沢山あって、書ききれないが、私の仕事であるガイドとクライアントの関係で外部から「ガセ」情報がもたらされるとちょっと厄介なことになる例をお話しする。例といっても実際にあったことである。
クライミングのガイドでは全く起きないが、一般登山道や縦走、スキーツアーなどのガイドを行うと、結構この問題が発生する。
それは、クライアントの情報収集からはじまる、つまり行動中に同宿した全く違うパーティから情報を仕入れてきたり、駅員に情報を聞いたりする。
この情報が、ガイドの私の言うことよりもクライアントにとっては信頼性が高いと思ってしまうから困るのだ。

こんなことである、立山に山スキーツアーに出掛けた際にトロリーの券売で室堂までの片道しか買わなかったら、駅員に「室堂は満員で泊まるところなんかもう無いよ」と
言われた、とあたふたして往復券を買ってきてしまう。宿は大丈夫だし、帰りはスキーで降りてくるんだから券は要らないんですよと言っても、あの雑踏をみると私の言うことなど上の空になってしまう。
もちろん、宿は確保してあって泊まれたのだが、駅員は往復券を売るのが商売とばかりにいい加減な情報を流すのだ。
やはりスキーツアーで、内蔵助谷の滑走を計画していて、クライアントの一人がロープウェイの駅員に聞いたらしいのだ。
「内蔵助谷のスキーに行くんですが大丈夫でしょうか?」
「危険だから止めなさい」と言ったらしい。駅員はそんなことを言える能力があるとは思えないのだが、クライアントはその情報を完全に信じてきってしまった。
よって、翌日の内蔵助谷の滑走では、そのクライアントは内蔵助滑走は止めて室堂で遊び、他のクライアントを連れて私は内蔵助の滑走に向ったのである。

午後3時頃室堂に戻ると、「あれー、大丈夫だったんですか?」
どうもクライアントはアクシデントを予想して帰ってこないと思っていたようだ。
この程度は、遭難とかの問題に発展しないからまだいいほうである。
次回は問題になりそうな「ガセ」を書いてみたい。

登山の「ガセ」情報?その2

これは、「ガセ」ではないかもしれない、が私がルートを辿ってないのでなんとも言えないが、気になっているルートの一つである。
奥鐘山西壁を登って、ピークから欅平駅の橋のたもとに直接降りてくるルートがあるというものである。
Uクラブの準ちゃんが絶対の自信をもって言ったので、本当かもしれないが、言われてから何度も欅平を訪れているので
そう思って見るのだがどこを降りてくるのか良く判らない。上から続いている尾根なんかなさそうに思えるし、間違えると
進退極まる絶壁じゃないのかなぁー。
もしもそれが本当に降りられるとしたら、冬季にピークから安全に下降出来ることになる。
というのは、私が冬季に京都ルートを3ビバークで登ったときには、ピークから南越までいってババ谷とジジ谷の合流地点に降りたが、
名剣温泉側に向うトンネルは雪で埋まっていて通れなかった。しかたなく、トンネルを迂回するためババ谷を着の身着のままで渡渉したのである。
結構水量が多かったので一か八かの決心が必要であった。
それを考えると欅平駅の見える橋のたもとに降りられたらどんなに良いだろう。
「ガセ」でないことを祈る。

登山の「ガセ」情報?その1

登山の分野にも「ガセ」情報が多い。一番困るのが、ルートのガセ情報であるが、技術的なガセ情報も始末が悪いけどね。
その1は、今でも気になっているルートについて、書いてみる。

「ガセ」じゃないのかと聞いたときに耳を疑ったのだが、言ってる人がそれなりの登山家だったので無下には否定していない。

それは、剣沢の小屋の談話室で岡山のKさんと会話中に、「5・6のコルから三の窓に行く水平道がある」と言われたので「エッー、ウソー」となったのである。
にわかには信じられなかったのだが、同席していた、Kちゃんが相槌を打つものだから、えっー俺だけ知らないルートがあるってことか。
仕方が無いので翌日、お客さんを連れてCフェースを登った帰りに池の谷ガリーに向わずに、5・6のコルに降りてそのルートを捜してみた。
しかし、どこを行こうとしても絶壁にぶちあたって三の窓に行ける道なんかなかった。
その後、某小屋にお客さんと泊まった際に、そこのオーナーおばあちゃんが「八つ峰を来ると双眼鏡で見ていて解るんだよ、下駄はいてくる人もいるからね」と
言ったのである。
「えっ、うそだろー」下駄で三の窓に向えるとしたら相当いい道のはずだが、おばあちゃん相手に言い争う気もないのでそのままにしておいたが
裏剣を写真でながめてもそれらしいルートは私には発見できなかった。

いまは、このルートは「ガセ」だと思っている。